藤田 稔さん
 
藤田稔さんは、長年中央研究所に在職され、潤滑油及び添加剤の分離分析方法の開発、高アルカリ価舶用シリンダー油などの研究開発と商品化、オイルサンドの研究開発などを担当されました。
そこで培われた技術と経験を活かして、今年の3月には、藤田稔さん著の新刊本「燃料油・潤滑油・グリース・添加剤の基礎と添加剤の分離分析方法」がサイエンス&テクノロジー社から出版されましたので、紹介いたします。B5判400ページ、定価54000円の豪華本です。
                                                               
 HP委員
 

著者紹介

技術士(化学部門)

石油分析化学研究所 代表
工学博士 (大阪大学)
現在86才。
現在も現役でご活躍
  (5社の技術顧問、セミナー講師など)

 
 
  石油の時代は,今後100〜200年は続くと見られている。石油ほど安価で使いやすい化学原料はない。石油化学製品の出発原料となる低級オレフィン(エチレン,プロピレンなど)やBTXを製造することができる。
 
 自動車用燃料油としてのガソリン,軽油は重要である。また,あらゆる機械・装置類の潤滑油とグリースが製造され賞用されている。石油の王者としての地位は不動である。石油から製造される石油製品は非常に多岐にわたっており,産業・工業の発展とともに要求される品質は高くなっており,研究開発が必須である。たとえばガソリンに清浄剤を添加することにより燃費が向上する。自動車用エンジン油にモリブデン化合物を添加することにより摩擦係数が低くなり燃費が向上する。

本書は3章から成りたっている。第1章では燃料油の製造方法,新燃料油(シェールガス,シェールオイル,オイルサンド油,オリノコタールなど)の開発動向,燃料油製造触媒の進歩,燃料油添加剤の化学構造と作用機構について述べた。第2章では潤滑油・グリース・添加剤の基礎知識について述べた。すなはち潤滑油・グリースの種類と性状,製造方法と化学的組成,試験方法とその意義,潤滑油・グリース用添加剤の化学構造と作用機構,潤滑管理方法について具体例をあげて分かり易く解説した。第3章では潤滑油および添加剤の分離分析方法について述べた。潤滑油の製造管理,市場調査,新製品の開発上,分離分析法は重要である。筆者が独自に開発したゴム膜透析―シリカゲルクロマトグラフィー―赤外線吸収スペクトル分析法は極めて有力で,日本の各研究所で行われている。本書が日本の産業・工業の発展にお役に立てばこれに過ぐる喜びはない。