「木漏れ日の美蝶(こもれびのびちょう)」(仮題) 制作記録
油彩画 F50
 髙橋 正明  

中学1、2年の頃だったろうか、夏の山中で薄暗い樹林帯にさしかかると木漏れ日の中に黒っぽい大型の蝶が飛び込んできた。その蝶が素早い動きで私の横を飛び去った一瞬、蒼味を帯びた黒い翅の上の鮮やかなコバルトと赤の紋様がまるで宝石のように少年の心をとらえた。これがミヤマカラスアゲハと私との初対面である。この時の感動をいつか絵にしてみたいという気持ちは漠然とあったが、趣味の乗馬で、馬の眼と耳は木の葉1枚の動きにも瞬時に反応することにあらためて気付いてからというもの、この構想は急に具体性を帯びることになった。  

2020年
下絵の作成(2020年2~3月)  
スケッチブックにF50キャンバスと相似形の区画を作り具体的な下絵を作成する。
1) 登場する5キャラクター(蝶♂、蝶♀、馬、女性、少年)のポーズ、大きさを決める。
2)  上記5キャラクターの平面上(画面上)の相互位置関係を決定する。
3) それら5キャラクターを取り巻く樹海と小径(ホーストレッキングコース)を描く。 
左は最終的な下絵(スケッチ、デッサン)です。

キャンバス上に制作開始(4月1日~) 
下絵に書き込まれたマス目の相似拡大(約4倍)マス目の中に下絵の輪郭(アウトライン)だけをデッサンする。あとは下絵を見ながら細かい色付けを行う。4月9日その粗目のデッサン終了と同時にまず樹海奥の暗緑色部分、次いで樹海の下草/藪の濃緑色部分を着色した。手前の椿、左端の榊は早くも下絵とは異なっている。なお馬の脚元の小径は林間乗馬トレッキング専用コースとして間伐材のウッドチップを敷き重ね小型ローラーで転圧仕上げしたものである。

木漏れ日の取込み(5月21日)  
樹海の着色が概成したところで、下絵の段階から予定していた木漏れ日を画面中央ほか数か所に白絵具で上塗りボカシをおこなう。コロナ騒ぎで展覧会の中止相次ぎ、嫌気がさしてこの年の制作をまもなく中止してしまった。

2021年
2月~  
木漏れ日の中はもっと明るくその外側はもっと暗く
しばらく休養したあとで作品をながめてみるといろいろ不備な点が目につくようになった。一筋の木漏れ日の中にも強弱があることに気がついて、まず青っぽい弱い光を導入した。だがこれは完全に逆効果で慌ててその部分を白絵具のベタ塗り(強い光)に置き換えた。結果は御覧の通りである。
蝶の観察者たち 


3月20日現在  
左でこれ以上蝶以外の手直しを繰返す必要は無いと判断する。現在95%の完成度で、あと5%は蝶の翅紋様を描くことである。
 

本ホームページ御鑑賞の皆様へのお願い
本作品は完成させた後、本年10月上野で開かれる公募展に出品するつもりです。どこの公募展でもそうですが、「出品作品は未発表品に限る」、あるいは「当選、落選の有無にかかわらず、他展への出品歴のあるものはこれの出品を認めない」と出品規定でうたっております。したがいまして公募展出品まではこの作品は「完成品として外部発表されていない」事実を貫く必要がありますことをご理解ください。完成品として皆様の身近に登場するのは今年12月7日~同12日の社友会美術部展(於京橋ギャラリーくぼた4F)からになります。乞うご期待。