書道と名前(名字)の由来

関東支部 五味渕さん 
 



生涯学習の「書道」の講座に通い、そこで漢字一(ひと)文字の重さに出会います。もともと、「書道」は模倣の世界であると考えていました。講座は講師がテキストから手本を作成し、それを受講者は臨書
(注1)として模写して学習します。いつの間にか、その世界の奥へと歩みを進めている事に気付かされました。

(注1)臨書は古人の名跡などを手本にして、書の表現を学ぶ

もともと漢字の五書体は、歴史的に甲骨文(こうこつぶん)(注2)に始まり、隷書、草書、行書、楷書と変化していきます。

(注2)甲骨文は亀の甲や牛の骨などに刻された占いの記録

文字として最古の漢字の甲骨文は篆書(てんしょ)の三分類の一つで、他に金文(きんぶん)(注3)、小篆(しょうてん)(注4)とともに総称して篆書と言い、ついには印章の文字へと進展します。

(注3) 金文は主として青銅器に施された文字
(注4)小篆は篆書の標準的な書体

漢字の書体と出会う度に、書の道の広がりを覚えます。勿論、それだけに留まらないで、大小の展覧会で鑑賞する機会を得ると、書す「書の親しみ」から観る「書風の好み」へと変質していきます。 


講座の仕上げ作品 (平安時代 空海「風信帖」から『恵止観妙門』) 


同仕上げ作品 (漢字かな文字交じり『初心わすれ春』) 


一方、書道の講座に通っている内に、関心が湧いてきたのが、「名前(名字)の由来」です。私の姓は「五味渕」、すなわち、五つの味の渕で、五つの味で構成されています。五つの味とは、国語辞典に依ると、「甘い・辛い・酸っぱい・苦い・塩辛いという五種の基本的な味」という事のようで、そもそも我が姓がどのような由来で、五つの味に繋がってきたのか、特にこの姓については伝わっている話が無いようです。

余談ですが、初対面の英語圏の方と最初に挨拶を交わす時の自己紹介は、まず名前を名乗ります。更に好みの世界の話に進みます。そこで、「書道」に親しみをもち、名前の漢字の一つ一つの意味に触れ、五味を構成する「五」と「味」の英単語へと話題は進展します。「味」は単語でテイスト(taste)、つまりファイブテイスツという事になります。基本的な五種の味は、英語の少なくても単語で正確に言えるようにしています。

<参考> 
 (1)甘い:(舌に甘い) sweet
 (2)辛い:(口の中でひりひりするように) hot ;(舌を刺すように) spicy
 (3)酸っぱい:(酸味の強い) acid ; (未熟、発酵による) sour
 (4)苦い: bitter
 (5)塩辛い: salty

「味」(taste)、この漢字に出会い、所謂、人が食す物の「味」の意味だけでは無い事が何となく解かり、英語の辞典には幾つかの他の意味で使われる事も解かってきました。何故、この名前(名字)の漢字が存在するのか、少し時間が有れば、辞典の助けを借りながら調べてみようと考えています。

最後に

私は常日頃から日記をつけることにしています。今回の寄稿文もある日の日記記載文を編集したものです。日記には日々の出会いや出来事などを思い出しながら記載していますが、この「書道と名前(名字)の由来」については、結果的に約3年に亘るテーマとなりました。

この寄稿に関して、かつて職場で文章力をつけて頂いた先輩のI氏の力をお借りして投稿に至りました。感謝いたしたいと思います。   (2020年7月30日)