1.略歴 | ||
私は1953年3月旧制大阪大学工学部応用化学科を卒業した。卒業論文テーマは、理学博士、船久保英一教授の研究室で「コールタール成分のクロマトグラフ分離」を行った。
1953年4月昭和石油(株)に入社し、品川研究所に配属された。当時の石井直治郎研究所長(後の上智大学工学部教授、工学博士)より「燃料油、潤滑油、グリース、添加剤の液体クロマトグラフィーによる分離・分析」の研究テーマが与えられた。これが私の石油研究の原点であり、ライフワークとなった。 1953年より1988年までの35年間、昭和石油(株)及び昭和シェル石油(株)の研究所に在籍して各種の分離・分析方法の開発や石油商品の開発を行い、会社に多大の利益をもたらして貢献した。 1989年から1999年までの10年間、富士シリシア化学(株)常勤技術顧問として勤務し、クロマトグラフ用シリカゲルの開発、空気洗浄用機能性シリカゲルの開発、石油精製用シリカゲル触媒の開発、特許申請文の作成、申請、社員教育などを行って会社に貢献した。 2000年から2018年の現在までは、技術士(化学部門)の国家資格取得のもとに石油分析化学研究所を設立して代表、研究所長となり、石油、燃料油、潤滑油、グリース、添加剤、分離・分析技術を核として、国内海外技術指導、国内5社の技術顧問、技術論文の発表、技術図書の発刊、各種セミナーの講師、メインテナンス・トライボロジーの講師と試験委員、技術開発小説の出版などを行っている。私の石油研究の歴史は優に60年を超えているのである。 |
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2.受賞歴 | ||
(1)1962年2月 大阪大学・工学博士
(2)1973年4月 石油学会 論文賞受賞 (3)1988年5月 石油学会 功労賞受賞 (4)1994年5月 石油学会 学会賞受賞 (5)1991年4月 日本科学技術情報センター (JICST) 永年翻訳功労賞受賞 (6)1999年2月 科学技術庁 技術士(化学部門) (7)2004年3月 日本油化学会功績賞受賞 (8)2005年5月 日本トライボロジー学会 功績賞受賞 (9)2006年6月 日本技術士会 会長賞(論文賞)受賞 (10)2008年6月 日本技術士会 名誉会員証受賞 (11)2009年3月 大阪大学工学部化学系同窓会 会長賞受賞 |
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3.石油技術図書(共著、自著)、小説出版 | ||
(1)舟阪渡、藤田稔・他「燃料分析試験法」南江堂
(1968) (2)舟阪渡、藤田稔・他「石油機器分析の実際」南江堂(1972) (3)桜井俊男、藤田稔・他「石油製品添加剤」幸書房(1986) (4)藤田稔・他「潤滑剤の実用性能」幸書房(1980) (5)藤田稔・他「潤滑グリースと合成潤滑油」幸書房(1984) (6) 藤田稔「石油分析化学」石油分析化学研究所(1992) (7) 藤田稔「燃料油・潤滑油および添加剤の特性と分離・分析技術」(株)技術情報協会(1996) (8)藤田稔共著「界面活性剤の機能創製・素材開発・応用技術」技術教育出版社(2011) (9)藤田稔共著「界面活性剤の選択方法と利用技術」サイエンス&テクノロジー(株)(2007) (10)藤田稔「燃料油、潤滑油および添加剤の基礎と応用」サイエンス&テクノロジー(株)(2008) (11)藤田稔「燃料油、潤滑油、グリース、添加剤の基礎と添加剤の分離分析方法」 サイエンス&テクノロジー(株)(2016) (12)藤田稔「愛と青春の追憶」東京図書出版(2004) (13)藤田稔「人生は90%が運」「研究と愛は永遠に」東京図書出版(2017) |
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4.潤滑油の研究開発 | ||
4.1 電気絶縁油の開発 | ||
1954年大手電機メーカーより電気絶縁油の製造開発の依頼を受け、油中の天然酸化防止剤を有効に活用する独自の製造方法を発見して工業化に成功し、独占的納入することが出来、会社に多大の利益をもたらした。これを基にして小説(13)を著した。 | ||
4.2 高塩基性舶用シリンダー油の開発 | ||
1960年残渣燃料油を用いる大型船舶機関のシリンダーライナーの摩耗を防止するため、高塩基性舶用シリンダー油の開発研究を行った。細孔直径の異なる2種のシリカゲル吸着剤による液体クロマトグラフィーにより、米国A社の添加剤を単離し、化学構造を決定し、これに改良を加えて当社独自の商品を製造し、多大の利益を上げた。これを基にして小説(12)を著した。 | ||
4.3 高粘度指数作動油の開発 | ||
1965年粘度指数200以上で酸化安定性、せん断安定性の優れた市場で最高品質の作動油の開発を行った。ポリマーの分離分析法として藤田式ゴム膜透析方法を発明した。市場調査の結果を参考にして当社独自の商品を開発して多大の利益を生んだ。 | ||
5.潤滑油流動点降下剤の新合成法の開発 | ||
石油会社自社で添加剤を合成して使用するために、各種の添加剤を探求した。米国E社の特許にもとづいて流動点降下剤アルキルナフタレンを合成したが、全く効果はなかった。種々検討の結果、反応原料中に微量の水を添加すると非常に有効な流動点降下剤が生成することを発見した。
合成添加剤の化学構造を明らかにし、作用機構を明らかにした。次に、工業的に自社生産して自社使用および販売によって多大の利益をあげることができた。 |
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6.脱金属触媒の開発 | ||
私は1980~1990年の間、通産省によって設立された新燃料油開発技術研究組合の研究管理委員長を命ぜられ、また、「カナダオイルサンド油からクリーンな燃料油の製造開発研究」の主任研究者として務めた。次の各項目の研究開発を行った。
(1)脱灰プロセスの開発 (2)ハイドロビスブレーキングプロセスの開発 (3)脱金属触媒の開発 (4)水素化分解触媒の開発 (5)エンジニアリング研究(工業化研究) 各項目について特許を取得し、カナダにおける工業化の機会を待っている。 |
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7.日本技術士会、化学部会、大学講演実績 | ||
(1)「カナダオイルサンド油よりクリーンな燃料油の製造開発研究」 (2)「石油新商品の開発における発想点とその成果」 (3)「技術士として生涯現役に生き抜く」 |
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本稿は(社)日本技術士会化学部会創立60周年記念誌(2018年9月発刊、A4、128ページ、カラー豪華本)に寄稿、掲載、公表されたものです。(著者) |
2023年4月15日掲載 |