疑似体験旅行をしつつ「街道をゆく」を読む♪

関東支部 今岡さん   

生来旅に出かけるのが好きで、あちこち出かけては楽しい思い出のページを積み上げてきましたが、日本も広いもので、地図を開いてみると未だ訪れてない地域が無数にあるのに気が付きます。 

自然と旅心が燻ってきます。しかし、現実はコロナ災禍による外出自粛要請により家に閉じ込まざるを得ず、気持ちだけが見知らぬ山河を駆け巡るばかりです。

そんな状況にあって、目についたのが書棚に長い間鎮座したままの司馬遼太郎の「街道をゆく」でした。昔読んで、いたく感銘を受けた記憶がいまも鮮明で、再度読み直しすることにしました。暇を持て余している境遇の身にとって格好の時間つぶしとなります。  
 
「街道をゆく」は皆様も多数の方がお読みになったと思われる大ヒット作品で、全巻43巻の大紀行です。著者が辿った街道は国内では北海道から沖縄まで、海外ではオランダ、モンゴル、台湾などに及び、民族と文化の源流を探りながら、風土と人々の暮らしのかかわりを訪ねる旅です。ただ単に風景を愛でたり、温泉に浸るのではなく、地域が抱える人文学的風土、風習を探索する紀行文ですので知的興奮が味わえますが、一方では難解な語彙や著者独特の文の脈絡に遭遇して戸惑うことしばしばです。いい意味での頭の体操と言えましょう 。

今回は少し趣向を凝らしたやり方で読書に耽りました。まず、旅先の街道沿いを
グーグルの航空写真を開き俯瞰し、感興が触発されればズームアップしながら、地理的、地勢的特徴を把握します。傍らには地図を開き、いま歩んでいる街道を追いながら情景イエージを膨らませていくとあたかも著者と共に歩んでいる様な錯覚を覚えます。
 
十津川(熊野川)の谷瀬の吊り橋<google航空写真とストリートビュー>
事例として奈良県のHPをご覧ください http://www.pref.nara.jp/42469.htm

まだ長い旅の途中ですが、私にとって未経験の土地、例えば山峡に包まれた十津川渓谷、「五月雨をあつめて早し最上川」で名高い最上川流域、薩摩の士族文化の残像が色濃く漂う種子島、朝鮮半島と目と鼻の先の壱岐、対馬等々、実際に足を運んで現地に降り立って感じるであろう旅情以上の深みが味わえる気がします。この上もない贅沢な旅と心得ています。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態は今しばらく続きそうです。ルーティーンとして日参していたスポーツジムは閉鎖、ゴルフ練習場も入場制限、その上外食もはばかられる昨今、日毎に閉塞感が募るばかりですが、この自宅にいながらの疑似体験旅行がささやかながらも私の日常生活面での清涼剤となっています。